リライト日 2022年6月
2021年に続き2022年、再生医療・美容医療分野で幹細胞培養上清液の次に【エクソソーム療法】に注目が集まっています。
私たち人間は細胞と呼ばれる小さい単位が1つ1つ集まって作られていますが、その細胞の親元となるのが『幹細胞』です。
幹細胞にはたくさんの成長因子やサイトカインがつまっているといわれていますが、その中でも『細胞の再生と修復』効果が高いのが幹細胞に含まれるエクソソームです。
近年の研究でエクソソームは、細胞から細胞へ情報伝達を行うメッセンジャーの役目を担っていることがわかってきており、さまざまな分野で活躍が期待されています。
今までと異なるアプローチが発見されれば、新しい病気の治療方法が確立されてくることでしょう。
今回の記事では、エクソソームの研究データをもとに期待できる7つのエクソソーム治療についてご紹介していきます。
エクソソームとは
エクソソームとは、幹細胞中に含まれる小さな物質です。
私たちの身体を作っている大元の細胞は幹細胞になりますが、多くの成長因子やサイトカインが含まれています。
その中でも、細胞の修復と再生効果が高いのは『エクソソーム』です。
エクソソームにはマイクロRNAが含まれており、細胞と細胞の間で情報伝達をしてくれるメッセンジャーの役割があり、良い情報を伝達して細胞の修復や再生をしてくれると言われています。
血管を強くしたり、抗炎症作用もあるため、疾病予防に注目が集まっています。
エクソソームががん治療・がん予防の概念を変える
エクソソームは、新しいがん治療法や予防法として注目されています。
お母さんと赤ちゃんを繋ぐ臍帯(へその緒)からとれる間葉系幹細胞の中には、再生能力が高く細胞の修復機能が高いエクソソームが豊富に含まれていることがわかっています。
質の良いエクソソームを点滴や注射、吸入療法などから体内にいれると、血液を介して体全体を循環し傷ついた細胞をみつけて修復をしようとする『ホーミング機能』が働きます。
この機能を活かしてガン細胞にアプローチすることができれば、癌の治療が可能なのではないかと考えられています。
またエクソソームは、体の中の様々な細胞から分泌されているといわれていますが、がん細胞からもエクソソームが分泌されています。
がん細胞から分泌されたエクソソームは、周囲の細胞に悪さをする可能性があることから、がんの転移や再発に関係している事もわかってきています。
東京医科大学の落谷先生は、悪いエクソソームの分泌を抑制することで、ガンの転移を防ぐことができるのではないかと述べています。
一般的ながん治療は、副作用が伴い身体的にも精神的にも苦痛が伴う治療法になりますが、エクソソームは現段階では副作用がないといわれています。
臨床でエクソソームががん治療に使用される日がくれば、がんで苦しむ多くの人の命を救えるかもしれません。
アトピー性皮膚炎とエクソソーム
エクソソームのホーミング機能は、アトピー性皮膚炎の治療にも効果があるのではないかと研究されています。
アトピー性皮膚炎の原因は、肌のバリア機能の低下やダニやハウスダストなどのアレルギーや汗や細菌などの外的要因といった様々な原因によっておこると言われています。
症状としては、肌に赤みや湿疹の炎症、強いかゆみが生じ、重症化すると搔きすぎて血がでてしまったり生活に支障がでてしまう疾患です。
赤ちゃんや子供の頃に発症し、年齢を重ねると症状が軽快すると言われていますが、中には大人になっても症状に悩んでいる方や大人になってから発症する方もいます。
発症要因はいくつかの問題が絡んでいる場合が多く、皮膚科医による適切な塗り薬の処方やステロイド治療、食事は運動、睡眠などの生活習慣の改善、体質改善も治療に必要です。
エクソソームは強い抗炎症作用があると言われており、症状がある皮膚にエクソソームを塗布する方法、点滴治療で体内から細胞のケアを行い症状の改善を促す治療があります。
アトピーやアレルギーの炎症を抑えて肌のバリア機能を改善することで、アトピー性皮膚炎の患者さんの症状改善が期待されています。
アトピー性皮膚炎患者は、全国に600万人いると言われています。
アトピーに悩む患者を救う事ができるのは、他でもないエクソソームなのかもしれません。
ツヤ肌はエクソソームで手に入れる!
誰もがしみ・しわのないツヤ肌に憧れますよね。
肌のトラブルやエイジング問題は、肌の細胞自体が老化していくのが原因です。
2021年は、肌の代謝を促進するレチノールや、肌の土台を修復する幹細胞培養上清液が配合された化粧品が注目を集めました。
そんな中、2022年は幹細胞から抽出される【エクソソーム】に期待が高まっています。
今までは幹細胞が再生能力が高いといわれていましたが、実は幹細胞の中に含まれるエクソソームの力だったのではないかとも考えられてきています。
エクソソームが配合された化粧品も各社から販売されてきており、日々のスキンケアから若返りが可能となれば、美容クリニックにいかなくてもエイジングケアができる世の中になるかもしれません。
AGA・薄毛はエクソソームでケアする時代
薄毛は男性の悩みと思われてきましたが、女性も薄毛に悩む人が増えています。
AGAの原因は、男性ホルモンが関係しており、女性の薄毛は、女性ホルモンの変化やストレスなどの様々な要因によってヘアサイクルが乱れることによっておこります。
正常なヘアサイクルでは、毛髪は時間をかけて成長することで、太くて健康な毛に育ちます。
しかしヘアサイクルが乱れてしまうと、髪の毛の成長がとまってしまったり早期に抜け落ちしてしまい髪の毛が生まれ変わらなくなってしまいます。
そうなると、1本1本の髪の毛が薄くなったり、髪の毛がはえていこないという事になるのです。
育毛剤や内服薬などいろいろ使ってみたけど効果が実感できなかった人も中にはいるかもしれません。
そんな方にはエクソソームによる薄毛治療がおすすめです。
エクソソームは頭皮内で毛を作る細胞自体にアプローチするため、ヘアサイクルの改善を促し太くて元気な毛が生えるサポートをしてくれます。
AGAや薄毛の治療法は増えてきており、治療費用もリーズナブルなクリニックが増えてきました。
男女ともに諦めるのはまだはやいですよ。
アルツハイマー型認知症には鼻からエクソソーム?!
『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』によると、2020年で65歳以上の認知症の患者は約600万人にのぼり、今後も高齢化社会に伴い増加してくるのではないかと考えられています。
とくに認知症の中でも、大きな割合を占めるのはアルツハイマー型認知症です。
まだまだ具体的な治療法が確立されていない認知症の治療にも、エクソソームが有効なのではないかと研究が進んでいます。
アルツハイマー型認知症の治療で期待されているのが『点鼻』です。
エクソソームを鼻から注入して脳まで届かせることを目的としています。
脳にエクソソームをいきわたらせることで、脳細胞を活性化して認知機能を改善させるという新しい治療法です。
アルツハイマー型認知症以外の脳の病気にも活用できる可能性があると研究が進められているため、今後の新しい研究発表に注目が集まります。
『膝が痛くて歩けない』がエクソソームで改善?
膝のメンテナンスに力をいれている人は誰だと思いますか?
ずばり、プロアスリート選手です。
プロアスリート選手は、スポーツで酷使してきた膝や関節に痛みや変形が生じるリスクが高く、中には関節の障害によってスポーツ選手生命が絶たれる人もいるため、私たち以上に気を使っています。
そんなプロアスリート選手も行っているのが幹細胞による膝関節治療ですが、今後期待されてるのが【エクソソーム】による膝関節治療です。
間葉系幹細胞から抽出されるエクソソームは高い抗炎症作用があると言われており、膝の炎症や痛みの緩和にも効果が期待できるのではないかといわれています。
従来の膝の治療法は、痛み止めのお薬を飲んだりヒアルロン酸を注入するといった対処療法、または手術が一般的でした。
しかし、対処療法では一時的な痛みの緩和であるため通院を強いられて、手術は入院をしなくてはならないためリスクが伴います。
エクソソームで膝や関節の治療ができるようになれば、入院や頻回な通院をする必要がなくなるため、痛みが強い人には嬉しい治療法です。
アスリートのみならず、膝の痛みで悩む人がエクソソームで救われる日はそう遠くはないかもしれません。
新型コロナウイルス感染症・後遺症にもエクソソームか?
新型コロナウイルス感染症後の後遺症があることはご存じでしょうか。
重症患者だけが後遺症に悩まされていると思っていませんか?
実は軽症だった人でも後遺症に悩まされている人がいるのが現実です。
具体的な治療法が確立されていない新型コロナウイルス感染症と感染後の後遺症ですが、治療法の1つとしてエクソソームが注目されています。
コロナウイルスによって傷ついた細胞にアプローチしたり、検査キットによって感染者の重症化リスクを鑑別することができるのではないかと研究が進んでいます。
コロナまん延防が解除されましたが、果たしてウイルスによって傷ついた細胞を、エクソソームは修復することができるのでしょうか。
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