「Jアラート」の開発などで知られる理経が、介護施設などで服薬を介助する際の本人確認として「顔認証を利用した誤薬防止システム」を発表しました。
理経は、1957年に設立されたシステム・ネットワークソリューションやVR・ARコンテンツ、電子部品・機器などを提供している企業。緊急地震速報、津波警報、弾道ミサイル情報など、対処に時間的余裕のない事態に関する緊急情報を伝えるシステム「Jアラート」の開発元として知られています。
今回発表された顔認証を利用した誤薬防止システムは、介護施設などで利用者が処方された薬を正しく服薬できるように介護職員がサポートを行う際、他者の薬と間違えてしまう事故を防ぐため、顔認証を利用して薬と処方された本人を一致させるシステムです。
あらかじめタブレット端末で利用者の顔写真を撮影し、IDや名前などを紐づけて登録すると、薬の袋に印字されたQRコードと登録された顔写真を照合し、本人の薬であることを確認できます。利用者がマスクをしている場合や、斜めからの顔認証も可能とのこと。
また、これまで人の手によるダブルチェックで行っていた薬の袋に記載された氏名および日時、与薬(※)のタイミングといった確認作業をシステム上で行う与薬履歴機能を搭載。与薬履歴と与薬のタイミングを紐づけ、指定の日時に実施されていない場合、シグナルやメールで警告し与薬忘れの防止ができます。
(※)病気の程度やその症状に合わせて薬を与えること。
2023年1月から提供を予定しており、今後は散剤・錠剤分包機メーカーの株式会社タカゾノと協業し、全国の薬局および介護施設へ展開していくとのこと。
理経は顔認証を利用した誤薬防止システムの開発にあたり、「2020年9月に施行された改正薬機法により服薬フォローアップが義務化され、薬剤の使用状況を“継続的かつ的確に把握”するという項目が追加されました。当システムを利用することで、投薬の状況を一元管理することが可能になります」とコメントしています。
他の人の薬を与薬されてしまった、与薬の時間・量を間違えられた、与薬を忘れられた事故を誤薬と呼び、介護施設での誤薬事故が社会的な問題になっており、死亡に至るケースも少なくありません。実際に、低血圧の利用者に対して、血圧を下げる薬が誤って与薬され、亡くなってしまった事故が発生しています。
原因は用意された薬が正しいものだと思う思い込みや、介護職員の人手不足で服薬介助時にダブルチェックの時間が割けないといったヒューマンエラーが多く、対策も与薬の直前に利用者の名前と薬を確認するなど、あくまでアナログなものでした。
顔認証を利用した誤薬防止システムの導入により誤薬事故が減り、利用者の安全と介護職員が安心して働ける環境づくりの向上に期待が寄せられています。
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