日本では600万人のアトピー患者がいるといわれています。
アトピーはこれまで、子供の頃に発症し大人になるにつれ良くなる病気といわれてきました。
しかし、近年では大人になっても症状が続いたり、悪化してしまうケースもあるため注意が必要です。
今回はアトピーの悩みを解決するためにその原因や治療法についてお伝えしていきます。
子供から大人まで悩む『アトピー性皮膚炎』
アトピーは『アトピー性皮膚炎』の略称で、皮膚のバリア機能が低下することにより外部からの刺激によって皮膚が炎症をおこしてしまう病気です。
かゆみのある湿疹ができ、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返します。
アトピーは顔や頭、首・肘などの皮膚のやわらかい部分に症状がでやすくなっています。
体が温まると血流がよくなりかゆみが増すため、温泉に行けなかったり旅行を楽しめない人がいます。
また、アトピーによる湿疹や掻いた傷が気になり半そでが着れない・タイトな服が着れない・スカートがはけないといった悩みも。
日常生活に支障をきたしてしまうため、中には精神的にも落ち込んでしまったり家にひきこまりがちになってしまう場合もある病気なのです。
アトピーの原因は?
何故アトピーになってしまうのでしょうか。
それは、肌の『バリア機能』が大きく関係してます。
皮膚は、表皮・真皮・皮下組織からできており、表皮は外からの刺激や有害な物質が体の中に入らないようにするためのバリア機能をもってます。
しかし、アトピー性皮膚炎の人は、なんらかの原因でバリア機能が低下してしまいます。
その結果、湿疹やかゆみといった炎症が肌に現れてしまうのです。
アトピーの原因は、遺伝などによる生まれもった要因や、ダニ・ハウスダスト・花粉などのアレルギー・細菌・衣服・ストレス・汗などの環境によるものが考えられます。
なぜ発症するのかは、現段階ではすべてが明らかになっておらず研究が進められている段階です。
アトピーが悪くなるのはどの季節?
アトピーは良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、夏や冬に症状が悪化する場合が多いようです。
夏は暑くなることにより、汗をかく機会が増えるため汗による刺激がかゆみとなって症状が悪化する場合があります。
冬は、乾燥によってバリア機能が低下するため、症状が悪化するケースが多く見受けられます。
また、冬にアトピーが悪化するもう1つの原因として、ビタミンDが関係しているといわれています。
ビタミンDは食品での摂取のほかに日光を浴びることによって作られますが、冬は日照時間が短くなり日にあたる時間が少なくなるため、体の中のビタミンD濃度が低下します。
ビタミンDは骨の強くする役割を担っているほかに、ウイルスから体を守る免疫機能の役割やアレルギー症状を改善する役割をもっています。
2008年から2010年に韓国で行われた国民健康栄養調査の1万5000人弱の研究データがあります。
アトピー性皮膚炎と診断されている人が、診断されていない人よりもビタミンDの血中濃度が低いことがわかりました。
2020年のPharmacology Research & Perspectives誌に発表された研究でも、重度のアトピー性皮膚炎にビタミンDの補給を行う事でアトピーの症状が改善することがわかっています。
つまりアトピーをもっている人は、体内のビタミンDが足りていない可能性が高いことがわかります。
アトピーは完治できる?
アトピーは完治が難しい病と言われてきましたが、正しい治療をすることで症状を抑え良い状態を保つことができるようになりました。
主な治療法は『薬物療法』『スキンケア』『悪化要因への対策』が3つです。
治療を断念してしまった方も、自分で判断せず専門の医師と相談して自分にあった治療法を見つけましょう。
薬物療法
昔は間違ったメディア情報によって、ステロイドは危険というイメージがありました。
しかし現在は、『アトピー性皮膚炎皮膚炎診療ガイドライン2018(日本皮膚科学会)』で、ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎治療の基本となる薬剤であることが発表されています。
そのため、ステロイドを使用することはアトピーの治療に大切です。
誤った使用をしてしまうと、副作用が生じる可能性もありますが、正しく使用することで効果を最大限に発揮します。
ステロイドを使用するうえで重要なことは『正しい量・塗り方』です。
例えば、大人の手のひら2つ分ほどのアトピー症状がある皮膚には、人指し指の先から第1関節に乗るくらいの軟膏の量(約0.5g)を塗ることが正しい使用方法になります。
朝晩2回の使用で、5gの軟膏チューブは5日間で使い切るイメージになります。
これを聞くと、今まで十分な量の軟膏を使用できていなかったという人もいるのではないでしょうか。
医師の指示のもと正しい使用方法でステロイドは外用薬を使用していきましょう。
また、2018年にアレルギー反応を抑制する働きがある『デュピクセント』という新しい治療薬が承認されました。
症状が重いアトピー性皮膚炎の患者に対する新しい治療薬です。
高価な治療薬であるため経済的な負担が大きかったり、注射による治療のため苦手な人にはハードルの高い治療法です。
しかし、かゆみや湿疹の改善に高い効果があるため重症アトピー患者の期待の治療薬となっています。
スキンケア
スキンケアの基本は肌を清潔に保ち、保湿することです。
アトピー性皮膚炎の肌には、黄色ブドウ球菌という細菌が多くいるといわれています。
細菌が増えないようにするためにも、汗をかいたら優しく拭き取ったり、入浴で洗い流す必要があります。
熱湯は刺激になるため、ぬるま湯を使用し、刺激の少ない石鹸やシャンプーで優しく肌を洗いましょう。
入浴後は肌の水分が蒸発してしまい乾燥しやすいため、保湿剤をはやめに塗ることが大切です。
保湿剤はさまざまな種類がありますが、界面活性剤が含まれるものは使用を避けることが望ましいでしょう。
界面活性剤は、皮膚のバリア機能を低下させ乾燥を助長してしまうため、アトピーが悪化する可能性があります。
主治医と相談して肌にあった保湿剤を選びましょう。
悪化要因への対策
食品アレルギー
アトピーの要因として気を付けたいのが、食品アレルギーです。
アレルギーには、即時型アレルギーと遅延型アレルギーがあります。
即時型は食品を食べてすぐ蕁麻疹や皮膚のかゆみ・咳・呼吸が苦しいなどの症状が現れます。
一方で、遅延型アレルギーは、普段食べているものが気がつかないうちにアレルギーとなっており、数日~数か月にかけて症状が現れます。
体がだるい・肌荒れ・頭痛など症状は様々ですが、食べ物が原因とはわからずに症状に悩まされる人が少なくありません。
即時型・遅延型アレルギーの要因として卵や牛乳・小麦が多いですが、遅延型アレルギーはその人がよく食べている食品がアレルギーを引き起こすと言われています。
まずは、病院で検査をして自分のアレルギーになっている食品を普段から食べないように心がけることが大切です。
また、アトピーの治療には、栄養のある食事をとることも大切です。
アトピーとの関係が深いビタミンDが多く含まれるサケなどの魚介類やきのこ類を積極的にとりましょう。
食品でとるのが難しい人は、ビタミンDのサプリもおすすめです。
そして、症状が悪化しないようにするために、ストレスをためない生活を心がけましょう。
ストレス
米国の研究によると、ストレス度が高い人は肌がかゆくなるというデータがあります。
ストレスは自律神経の乱れの原因となるため、かゆみを促進してしまうのです。
自分がどういった時にストレスを感じるのか、紙に書きだして可視化することで自分の感情の動きを知ることも大切です。
生活の中で、ストレスになる人間関係・家庭や職場の環境など今一度見直してみましょう。
『こんな時にイライラしている』
『あの場所にいると、不安な気持ちになる』
そういった負の感情時に、かゆみが生じて無意識のうちに肌をかいている可能性があります。
ストレスをためない生活を心がけましょう。
ビタミンDを取り入れる
日光にあたる機会を増やして体内のビタミンDを作り、免疫力を高めることも重要です。
体内のビタミンDを生成するにあたり1日に必要な日光照射時間は、約15〜20分程度と言われています(季節・地域によって必要な日光照射時間は異なります。)
紫外線による刺激が心配な人は、手のひらを日光浴するだけでも十分です。
手のひらだけでも、アトピーの症状が緩和される可能性があります。
免疫力を高めて健康な体を目指していきましょう。
エクソソームによるアトピー治療
再生医療の分野において、エクソソームによる治療が注目を集めています。
エクソソームは、傷ついた細胞の修復や再生能力をもっており、癌や完治が難しい病気の治療に効果が期待されています。
強い抗炎症作用もあるため、アトピー性皮膚炎の治療にも有効ではないかと言われています。
エクソソームによるアトピー治療は2つあります。
一つ目は、エクソソームを点滴することで全身の細胞を修復して免疫力を高める治療。
二つ目は、アトピーの肌にエクソソームをぬることで肌のバリア機能を高める治療です。
エクソソームは、肌の土台を根本的に修復する力があるため、肌の再生を促すといわれています。
そのため、アトピー性皮膚炎の治療の他にも、肌管理目的で美容皮膚科領域でも人気となっています。
今までどんな治療を試しても効果がなかった人や、やりたいことをあきらめていた人にとって、エクソソームによるアトピー治療は大きな希望となるでしょう。
アトピー治療を諦めない!
アトピー性皮膚炎で肌が赤くなってしまったり、かきすぎて色素沈着を起こしてしまい肌が黒くなってしまうと、自分の肌と人の肌を比べて落ち込んでしまう事があります。
『自分はもう治らないからだめだ。』と、治療に対して弱気になってしまうと思うような結果にならない場合があります。
信頼できる医師や、同じくアトピーの悩みを抱える人と相談しあうことで、自分にあった治療法や生活スタイルをみつけていきましょう。
近年ではアトピー性皮膚炎に対しての最新の治療法も確立されており、エクソソーム治療への期待も高まっています。
アトピーが治る病気として国民に認識される時代も、そう遠くはないはずです。
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