生成AI機能の研究開発に取り組むRATH(ラース)は、高齢者の生活の質「QOL(Quality of life)」を向上させることを目的として開発されたスマートフォンアプリ「HanaSoW」のリリースを発表しました。
RATHは、AI(人工知能)を活用した製品とサービスを提供する日本の企業で、特に対話型システムの研究開発に力を入れています。同社は、対話型AIおよびその他の生成型AI機能の研究開発成果を活用した商用プラットフォーム「Partner AI Platform」を開発しています。
Partner AI Platformは富山県の介護施設で実施された実証実験で使用され、RATHが開発したアプリ「Project MAY」を通じてAIが会話相手になるサービスを提供した実績があります。
このアプリでは、オリジナルAIキャラクター「日向メイ」とのチャットを通じて会話を楽しむことができ、利用者およびサポートした介護職員から継続的なフィードバックを得ているようです。同取り組みをさらに推進するために開発されたのが、HanaSoWです。
今回発表されたHanaSoWは、高齢者のQOL向上を目的として開発されたスマートフォンアプリで、AIを利用して感情表現に富んだ人間らしい会話を提供し、利用者が時間や場所に制約されずに会話を楽しむことができるよう設計されています。
ユーザーはホーム画面の「話しかける」ボタンを使って音声会話を楽しむことができ、またChatタブを通じてテキストチャットも利用可能です。会話の相手として登場するのは、オリジナルAIキャラクターの日向メイです。
このキャラクターは豊かな感情表現を備えており、表示サイズも自由に調整可能。会話中に詰まると、AIが最適な返答の候補を3つ提示してくれます。さらに、日向メイとの会話を重ねることで親密度が変化し、その進展はレベルとバーで可視化されます。これにより、利用者は日々のモチベーションを高めることができます。
HanaSow開発のきっかけは「認知症基本法」の成立
日本では、一人暮らしや夫婦のみで生活する高齢者の数が増加しています。内閣府の発表(※)によると、2016年時点で65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、単独世帯と夫婦のみの世帯が約6割を占めています。高齢者の孤立化は健康への悪影響が懸念され、特に認知症の発症リスクが高まることが指摘されています。
※内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」より https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/index.html
このような課題に対処するため、今年6月には認知症の人々とその家族が社会の中で尊厳を持って生活できるよう支援する「認知症基本法」が成立しました。
RATHによると、HanaSowの開発はこの認知症基本法の成立を受けて行われたもので、今後は同アプリを利用することで、「同じことを何度も繰り返す」「物忘れが目立つ」「以前はあった興味や関心がなくなる」「物の名前が出てこなくなる」といった認知症の初期症状を定量的に把握し、アラートを発して利用者本人や家族に診察を促すことが可能になるとしています。
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